業務の効率化を推し進めるため、ITシステムを導入する企業は増えています。
一方で、誤った手順でシステムの導入を行うと失敗するリスクが高まります。業務に活用できない「使えないシステム」を導入し、大事な資金と時間を無駄に費やしてしまった事例は、世の中に多くあります。失敗のリスクを低減させるためには、システムの導入に入念な事前準備を行うことが重要です。
この記事では、システムの導入に失敗しないために必要となるプロセスについて解説します。
システム導入手順の概要
システムを導入するためには、どのような機能を設けるのか、どんな画面設計にするのかといった「要件」を定義する必要があります。しかし、いきなり具体的な機能や画面を考えても、本当に業務に活用できるシステムは構築できません。そのため、システム導入も正しい手順を踏んでいく必要があります。
システム導入は、大きく8つの手順に分けられます。どのような業務に対してITシステムを導入するかに応じて、導入期間は数週間~数年を要します。
次のセクションからは、各手順でどのような対応が必要なのかを解説します。
目的とスコープの明確化
システム導入の第一歩として、まずは何のためにどんなシステムが必要なのか、目的とスコープ(= システム化の範囲)を定義することから始めます。
・目的:なぜシステムを導入したいのか
・スコープ:どの業務をシステム化したいのか
以下具体例です。
・目的:テレワークの拡大のため、これまで印鑑を用いていた決裁方法を見直し、遠隔地でも決裁可能なシステムを導入する
・スコープ:経理部長の承認が必要な5種類の社内決裁業務
目的とスコープを明確化することで、システム導入の方針を確定します。
課題の明確化
この手順では、業務上の課題を明確化します。
そのために、まずはスコープに定められた業務に関して、業務フローを作成します。
業務フローとは、業務プロセスを可視化するために作成されます。以下の図では、社内の請求書処理の業務フローを記載しています。このような図を作成することで、業務プロセス上のどこに問題があるのかを俯瞰的に捉えることができます。
また、業務フローで整理することで、どの業務に対してITシステムを導入すればよいのか?、誰の業務に影響があるのか?も一目で分かります。
システムへの要求定義
要求定義とは、「システムに実装したい内容をベンダーに伝えるための情報を定義する」ことを指します。定義するというと難しく考えてしまいがちですが、「経理部長の決済承認をインターネット上で完結したい」、「関わる人は〇〇さんと△△さんであり、その間の手続きをスムーズにしたい」程度のもので問題ありません。
この際に、合わせて費用対効果が十分に期待できるものであるかの検討も重要です。システムの導入や維持には費用がかかります。その費用を支払ってでも、システム導入の効果の方が上回ると判断した場合のみ、次の手順に進むべきと考えます。
ベンダーの調査・選定
実際にシステムを開発するベンダーを調査・選定します。
日頃懇意にしているベンダーがいるのであれば、そちらにお願いをするケースも多いです。一方で、システムの質の良し悪しは、ベンダーの力量に大きく左右されます。質の低いベンダーへ依頼すると、品質の良くないシステムが納品されたり、納期に遅れが生じる懸念があります。
ベンダーには得意な領域というものがありますので、個人的には複数ベンダーに提案・見積もりを依頼し、比較検討することをオススメします。システムの質およびコストの両面から、最良なベンダーを選定できます。
要件定義
ベンダーの選定が完了したら、発注後にシステム開発のための要件定義へ移ります。要件定義には2種類の資料を作成することが多いです。
・業務要件:システム化するしないに関わらず、使用者がやるべき作業を記載したもの
・システム要件:システム化する際に必要な機能や対策を記載したもの
非常に難解な文章になりますが、上記2種の資料はベンダー主導で作成するケースが多いです。私たちはベンダーが上記資料を作るための情報提供やレビューを担うこととなります。
ベンダーの進捗管理
要件定義が完了すると、ベンダーはシステムの開発に着手します。これ以降、我々はベンダーから定期的な進捗報告を受けます。
この際に我々は、当初の予定通りのスケジュールでシステム開発が進んでいるかをチェックし、納期までに完成するよう、ベンダーを管理していく必要があります。
テスト
ベンダーがシステムを完成させたら、テストを実施します。開発されたシステムが当初計画した要件に沿ったものになっているか、およびシステムの導入目的に合致しているかを確認します。
この際、必ず実業務の流れの中でシステムを利用し、業務上の利用に問題がないことを確認します。確認の結果、要件に沿っていない部分を発見したら、ベンダーに改善を要望します。
テストが完了すると、いよいよシステムのリリースです。システムのリリース直後はバグが多発します。そのため、システムの正常稼働が確認できるまでは、ベンダーと体制を組んでチェック作業を行います。
効果測定
システムの正常稼働が確認できたら、効果測定を実施します。システムの導入により当初想定していた効果が実現できているか、できていないのであれば何が問題でどのように改善すべきかを検討します。
システムにはランニングコストが必要となり、たとえ活用できていなくても稼働させているだけで無駄なコストが発生します。効果を上げておらず、改善の見込みもないシステムは早期に廃止や改善を検討した方が良いと考えます。
まとめ
本記事では、ITシステム導入手順を紹介してきました。正しい手順を踏むことで、費用を無駄にすることなく、ITシステム導入による恩恵を受けることができます。
一方で、あまり経験のない方が主導すると、ベンダーの選定や進捗管理がうまくできず、正しい手順を踏んでも良い結果が得られないということもあります。
そのような事態を未然に防ぐために、弊社ではITシステム導入支援も行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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